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コロンバス旅行記13:走る便器編

オッパーの作品の一番古い類の単行本というかアルバム?をまとめて読む。20世紀初頭の新聞連載をまとめた本のことどう呼んだらいいのかいまいちわからない。「コレクション」だと誤解を呼びそうだし……。1902年に出た作品群と1908年に出たのとがあって、古い方はハーストのところが出版社ということになっているが、新しい方はFrederick A. Stokeという出版者が表記されている。古い方は印刷の質がけっこうひどい。新聞ではもっと上質な印刷ができていたはずだが、まぁ新聞の輪転機をそのまま使っていたとは思えないし事情が違ったのかもしれない。8年の方はちゃんとしている。

改めて読むと新聞初期のオッパーは運動へのオブセッションがすごい。パターン化された話を繰り返した上でコンテンツ性を担保するには運動で勝負するしかないということだろうか。『アルフォンスとガストン』は礼儀作法によって運動が止まることで出会うべきものが出会わなかったり衝突すべきでないものが衝突したりする世界だ。『ハッピー・フーリガン』もそうだが、社会における人間の振るまいの物理現象としての側面をつかってスラップスティックするというのがテーマだったように思う。また、『彼女の名前はモード』みたいに毎週必ず起こる反復へのメタ言及的な話を延々続けるというのも最初期のアーティストとは思えないシラケっぷりで面白い。20年代の冒険ものよりずっとコンセプチュアルなのではないか。

日本関係資料のライブラリアンで教授でもあるデイヴィス先生がトンプソン図書館を案内してくれた。とにかくデカい。東アジア関連の棚を見たら社史関連の書籍がやたら充実していて驚いた。日本マンガの棚もあって、鬼滅のような人気作の他に『ごくせん』とか『やが君』とか面白いチョイスが揃っていた。更に別棟にスタックがあるらしい。最近できたというフィットネスバイクに乗りながら読書できるウェルビーイング・リーディングルームみたいな名前の読書室も見せてもらった。おもろいこと考えるなぁ。

前々から気になっていたことを聞いてみた。大学構内でたまに車輪のついた大便器みたいなのが走ってるのを見かけるんですが、アレってなんなんでしょう。食事を運ぶロボットらしい。便器の蓋をあけるとホットドッグとかが入っているのか。先生によると、今年始めくらいまでは今よりもっとたくさん走っていたのだが、ロシア企業がオペレーションしていたせいで件の戦争が起こった直後に全く姿を消したそうな。つい2週間前くらいに新しい企業の便器が導入されて走り始めたばかりだという。そんなグローバルな存在だったとは。昼時になると芝生をリスと走る便器が行き交う。なんだかオッパーっぽい状況な気もする。

図書館一階にある喫茶店で英語日本語交えながら日本のマンガ研究事情について話す。なんやかやあってデイヴィス先生の自宅で夕食でもどうですかと誘われてしまった。もちろん。緊張するけど。