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コロンバス旅行記6:揚げ物編

今日は授業の関係でライブラリが午前中で閉まってしまうとのことだった。ビリー・アイルランドの資料はリファレンス管理の目的に限り(要するにそのまま複写して図などで使わない限り)所定のフォームを提出すれば好きなだけ撮影できる。オッパーの資料から良さげなのを見繕ってスマホで撮影して撤収。

昼食探索。看板の一部が脱落しているのか「フーメン」とカタカナで書かれた店を発見。店頭のメニューを見ると、しかしラーメンはお休み中らしかった。張り出されたメニューの中に"TAKOYAKI"の文字を発見。コロンバスのたこ焼き!入ってみる。

基本的にはタコライスみたいなサラダ飯的なものをサブウェイ方式で売ってる店のようだった。タコヤキ頼むだけなら難易度高くなさそうだ。カウンターのメニューには見当たらなかったので聞いてみる。Do you have TAKOYAKI? 店員さんが奥に確認しに行く。なんかよくわからんがあるらしい。お金払って待つ。たこ焼きを作ってる気配が全然ない。サラダとフライヤーをいじり続けている。もしかして俺は何かミスったのだろうか……と思ってたらフライヤーから丸いものが5つ出てきて、ソースと鰹節と「メイヨア」っぽい何かがかけられて出てきた。銀だこっぽいタイプらしい。中は結構ちゃんとした半生の生地でたこ焼きしており、マヨと思われたソースはかなり辛くて、ビールがあったら延々食べるだろうなという感じで美味しかった。

早めに帰って持ち帰った資料を見る。どうやらオッパーは飛び抜けて几帳面で、責任感が強く、人格ができている人物であるようだ。オハイオ州マディソンで生まれて14歳まで学校に通うも中退、地元新聞の印刷工の手伝いをする。中退したのは何かしらの身体的障害を持っていた母親の負担を軽減するためであったらしい。仕事が空いた時間にカートゥーンを描いて雑誌に投稿し小銭を稼いでいた。元々絵は好きだったらしい。その後ニューヨークでカートゥーニストとして一旗揚げようとするも上手く行かず、ブロードウェイ近くの繊維関連の店で働いた。値札とかの挿絵を描いたりもしていたようだ。この頃にほんの少しだけアート関連の教育を受けたようだ。やがてデザイナーの友人ができて、そこからキャリアが本格的に動き出す、といった具合らしい。てっきりブルジョワの生まれかと思っていたが、父親はオーストリアから商売をするためにアメリカに移民してきたらしく、ということは元々金持ちというわけではなかった(金持ちなら母親の世話は他の人に任せられたはず)はずだ。1899年に新聞社に移ってから目の病気で引退する1932年まで毎日カートゥーンを描いていたという話も合わせて、ちょっと清廉潔白すぎて怖くなってくる。

同時代のカートゥーニストたちは、たとえば14歳の娘と結婚した挙げ句その娘の金遣いの荒さから離婚したマッケイとか、盗賊に取材に行って手に入れた拳銃にテンション上がっちゃってマンションの自室でぶっ放して大家に追い出されたバド・フィッシャーとか、人間的弱さを示すエピソードのひとつやふたつあるものだが、オッパーはそれが見つからない。見つからないこと自体が彼の歪みなのかもしれないが。

絵について専門的な教育はほぼ受けていないので、雑誌の仕事だとミスも結構あったようだ。とうもろこしを茎のてっぺんに生やしてしまったときは読者からめちゃくちゃツッコまれたらしい。

左翼系の雑誌に乗っていたオッパーの評論を発見。あまりにもイデオロギー批評的で鼻白むが、オッパーの風刺画が読者にもたらす力とその風刺画の攻撃対象が社会にもたらす力とをともに「影響力」influenceと表現していて興味深かった。今風に言えば、世の中には良いインフルエンサーと悪いインフルエンサーがいて、オッパーは前者、トラストは後者ということ。オッパーは労働者に教育的(というのはつまり革命に向かわせるということだが)な影響力を発揮する、彼のような影響力のお陰でいまや世の中がウォール街のギャンブラーどもに支配されていることに人民は気づき始めているのだ、時は近い!ジャーン!みたいな文章だった。

今日見た資料の限りでは、多くの場合オッパーの代表作は「ハッピー・フーリガン」というよりは「ウィリー・アンド・パパ」というマッキンリーとトラストを風刺した政治カートゥーンということになっていた。コミック・ストリップの方が金は稼いでるけど本当に偉大なのは……というような話の運びがしばしば見られた。政治風刺家としてのオッパー像をいかにコミックス作家としてのオッパーへと折り返すことができるのかがおそらくは重要である。こんなこと書いてて誰かにネタを盗られたりしないだろうか。しないか。

ケンタッキーリベンジ!再びUberEatsを頼む。今回は非常にスムースに届いた。しかし肝心のグレービーが入っておらず、グレービーのかかったマッシュポテトだけが入っていた。グレービーとグレービーポテトを同時に頼むやつなんていないだろと思われたのだろうか。つくづくグレービーに縁がない。昨日買ったデカいバドワイザーと一緒にいただく。日本のKFCより衣がクリスプしている。というかなんで日本のKFCの衣ってあんなにグジュってるの。まぁアレはアレで好きだけど。

知らなかったけど土日のあいだにコロンバスでは3人が撃たれる事件があったり麻薬や銃を取引する業者が30人くらい一気に逮捕されたりしていたらしい。それと関係あるのか知らんけど今日はキャンパスで警官の姿をよく見かけた。急に怖くなってきた。