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コロンバス旅行記21:偽物編

1902年あたりのハースト紙は別作品同士をコラボさせる企画をかなり積極的に行っている。『ヘラルド』から「フォクシー・グランパ」を引き抜いてきたときは、連載作品のキャラクターほぼ全員をクロスオーバーさせた作品のなかにグランパを登場させるという気合の入った企画を立てている。ハーストバースとでもいうべきものがこの頃既に出来上がっていた。だが問題は、このあとしばらくするとコラボ企画は見られなくなっていくということだ。見られなくなる時期までまだ読めていないので事情はよくわからないが、おそらく1903年ころからシンジケーションが本格化するに際して、他紙に掲載権を売るときにどの作家のどの作品をやりとりしているのか明確にしなければならなくなり、権利が曖昧になるコラボ作品は忌避されるようになっていった、とかそんな感じではないかと思われる。

パンダエクスプレスに入ってみる。なんかレジで言われることが他の店より多かった気がする。よく聞き取れなかったけど。工事現場から昼休みに来たらしいオッサンがレジ前で小銭をぶちまけてしまって、俺を見ながら何事か言ってきた。これまたよく聞き取れなかったのだが、まぁこの状況で言われることなんて拾ってくれとかミスっちまったとかだろつし、いずれにせよ拾ってやるべきなので拾って差し出すと、"you can keep it, bro"と言われた。動揺する。もしかして大きなお世話だったのだろうか。とはいえ相手の顔に悪意は感じられなかったし、ほんの数セントだったからお礼というかコミュニケーションとして取っておかせたということなのか。なんだか単に英語能力の問題に限らない深い溝のようなものを感じてしまって、一瞬でどっと疲れてしまった。

今日の午後はリーディングルームが休みなので図書館で勉強するつもりだったのだが、できそうにないので気分を変えてオートン・ホールでティラノサウルスの化石を見ることにする。オートンは建物自体が「イエロー・キッド」が活躍していた時期のものだったりして価値があるのだが、エントランスにいきなり立っているTレックスの化石が全部持っていってしまう。狭めの展示室にかなりの密度で巨大生物の化石が並んでいてかなり面白い。その割に俺以外誰もいなかった。

帰ってブッダマシーンをつけてぼんやりする。そういえば土日はイベント盛りだくさんで休憩してなかったなとか、今日はコーヒー飲んでないし離脱症状が出てんのかなとか色々考える。なんとなく『偽物協会』1話を読み返したら、英語が下手くそな自分が綿子に重なってしまいメチャクチャ泣いてしまう。猫の毛になって自分だったかもしれない家族を眺める寂しさが何故だかすごく迫ってくる。大学近辺ではアジア人も珍しくないから皆普通に英語が話せるものとして俺に話しかけてくるが、いざ会話が始まるとカタコトになって、俺はふにゃふにゃになる。俺はアメリカ人の偽物なのだった。